/ Research

知能システム組織学
ー人間の知に学ぶ「ものづくり」ー

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研究メンバー

教授  村田 厚生 (Atsuo Murata)

研究室Webサイト:http://iims.sys.okayama-u.ac.jp/

人間工学・認知工学に基づいた,使いやすく安全なシステムの設計

人間が複雑な機械システムを安全に操作したり、社会システムを円滑に運営したりするためには、人間とシステムの関係の調和をとり、システムの破綻や事故につながるような重大なミスを予防することが大切です。当研究室では、人間の知に学ぶ「ものづくり」をコンセプトとし,人間の行動を調べ、安全なシステムの設計に活かす研究を行っています。例として,ドライバの生理・行動指標に基づいた居眠り運転・漫然運転の予防技術の開発,人の意思決定を歪める認知的バイアスがヒューマンエラーや事故につながるメカニズムの解明などを行っています。代表的な研究テーマを以下に述べます。

自動車の予防安全技術:ドライバの覚醒水準の推定

自動車の予防安全技術:ドライバの覚醒水準の推定

生理指標を計測しながら,ドライビングシミュレータによる模擬運転作業を行っているところです。

どんなに注意を凝らして集中しても,人間は集中力を維持し続けることはできません。自動車の運転においても同様で,いくら注意して運転しようとしても,ドライバはミスをしてしまいます。交通事故の原因の多くは漫然運転・居眠り運転であることから,ドライバのミスを予防するためには,人間の注意力・集中力・覚醒水準の欠如を補うような予防安全技術が必要不可欠です。この研究では,ドライバの行動指標(ステアリングの把持圧,シートの背圧・座圧,首屈曲角度など)と生理指標(脳波,心拍変動性指標,瞳孔径,瞬きなど)の時系列変化からドライバの覚醒水準を推定したり,居眠り運転状態を事前に予測するシステムを開発しています。

自動運転車におけるビジランス低下の予防

自動運転車におけるビジランス低下の予防

運転中のシート座面の圧力分布の計測です。

昨今,自動運転の技術開発が盛んですが,現在普及が進んでいる技術では,完全に車に操作を委ねるわけではなく,必要に応じてドライバの介入も必要です。自動運転技術はLevel 0~5の6段階に分けられますが,Level 2ではドライバによる監視義務があり,Level 3では緊急時にはシステムからの要求に基づいてドライバが運転操作へ復帰する必要あるため走行状況を把握しておく必要があります。こうした状況では,ドライバの負担軽減や運転ミス軽減が期待される一方で,ドライバの作業は単調な監視作業となるため,覚醒水準が低下し注意力が維持できなくなることが懸念されます。この研究では,自動運転における監視作業がドライバに与える影響を調べ,ドライバが注意力を維持し,安全に自動運転車を利用するための方法を検討しています。

使いやすい視線入力システムの実現

高齢者や上肢不自由者のように手指の運動機能が十分でないと,マウスによるパソコン操作が困難になります。こうした方々がマウスを使わずにパソコンなどの情報機器を操作する方法として視線入力システムがあります。視線入力システムでは,ユーザの視線をアイカメラで検出し,その位置によってカーソルの操作を行うので,重度の肢体不自由者であっても手を使わずに,随意的な眼球運動によってパソコンを操作できるという利点があります。この研究では,ユーザにとって使いやすい視線入力システムを開発するために,素早く正確な視線入力方法の提案,視線入力システム用の画面設計要件の検討,視線入力システム用のユーザビリティ評価指標の検討などをしています。

視線入力システムを使ったポインティング作業

視線入力システムを使ったポインティング作業です。図中の手前(左)側の人は,視線によるカーソル移動によって,画面中のターゲット(黒い四角形)をポインティングしています。

アイカメラによって視線を検出

アイカメラによって視線を検出しています。

認知的バイアスとヒューマンエラー,事故の関係性の分析

われわれ人間は必ずしも常に合理的に行動するわけではなく,様々な認知的バイアスによって意思決定が歪み,不合理な行動をとると言われています。この認知的バイアスがリスク評価の誤りや違反行動などの不安全行動を引き起こし,それがもとで重大な事故が起こるケースも多くあります。当研究室では,認知的バイアスがヒューマンエラーや事故につながるメカニズムを明らかにし,安全なシステム・組織作りに貢献することを目指しています。

認知的バイアスとヒューマンエラー,事故の関係性の分析

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